僕の心のヤバイやつ (10) 特装版 4月8日発売!
夏! 海! 青春!
:: 2016/7/5 火曜日::

■[ラノベ]白樺の森の狩り「ウロボロス・レコード」3巻

ウロボロス・レコード3 (ヒーロー文庫)
著者/訳者:山下 湊
出版社:主婦の友社( 2016-06-30 )

作者サイト:山下湊
絵師サイト:シノノノート
絵師twitter:しのとうこ(@touco_shino)さん | Twitter

尚武の国ザンクトガレンに広がる魔獣がひしめく森の奥深く…
結界に守られた白樺の森に住む年若いエルフのバーチェは美しも生粋の女狩人。
ある日未熟さから獲物を追いかけて結界の外に出てしまい絶体絶命の窮地に陥る。
しかし偶然ドライと名乗る隻眼のダークエルフに助けられ…

平和に暮らすエルフたちに唐突に訪れる悲劇が辛い。
自分の不老不死の望みのためエルフを同じ知的生命体ではなく、
実験材料とか便利な駒にしか思ってないトゥリウスの狂気がヤバイです。
特に今回はエルフの若いカップルのキャラを掘り下げてからの惨劇なだけに、
感じられる悲劇の度合いは今までの比じゃないですね。
その悲劇のキッカケであるドライの背景も考えると更にヒドい…

自然との共生と狩りについての矜持を持っていたバーチェが、
自分のせいで被った里の壊滅的な被害と相方のチャーガによって心が壊れ、
幼児退行してしまったのが本当に辛いなぁ。
ベルセルクの13巻みたいな感じと言えばわかりやすいかな。
しかも主人公が殲滅する側な上に現場に出てすらいないあたりがとてもヒドい…

でもまぁ、そのダークファンタジーなあたりが面白いのが困りモノですね。
捕らえたエルフたちの改造手術だけでなく、
ホムンクルス作成に対して倫理観に欠如した発想がナチュラルに出てくるあたり、
マッドサイエンティストとしての資質がありまくりなのがよく判ります。
その頭脳はやはり悪魔的だよなぁ。

さて、次は貴族同士の権力闘争に巻き込まれますね。
静かに錬金術の実験だけやらせておけばいいのに、
あの悪魔を王都で失脚させる陰謀に巻き込むとか、
どちらにも損しかないんだけど…
それをやらざるを得ない人の業こそが一番の罪深さですかねー…

この3巻でもWeb版からの補完が多くあったし次の4巻も楽しみです。

:: 2016/2/2 火曜日::

■[ラノベ]凶意の内政チート「ウロボロス・レコード」2巻

ウロボロス・レコード2 (ヒーロー文庫)
著者/訳者:山下 湊
出版社:主婦の友社( 2016-01-30 )

作者サイト:山下湊
絵師サイト:シノノノート
絵師twitter:しのとうこ(@touco_shino)さん | Twitter

現代日本で一度死に、魂の消滅のおぞましさを知ってしまった主人公。
魔法がある異世界で伯爵家次男トゥリウスと目覚めた彼は、
二度と死にたくないという思いから錬金術を用いて不老不死を目指すのだが、
そのためには手段を選ばず大量に奴隷を購入して人体実験を繰り返し…

貴族の正道を行く兄に蛇蝎の如く嫌われたために辺境の地の領主に任命され、
失政を望まれながらもあっという間にロボトミー手術で代官を洗脳して掌握するだけでなく、
錬金術を使った内政チートっぽいことをするという手腕を発揮。
しかも本来の目的である不老不死の研究も忘れずにやっているあたりが凄い。

正直言って2巻はまだまだ序盤なんですよね。
直属の部下であるオーパスシリーズも女ダークエルフのドライに、
元死霊術師の人造ヴァンパイアロードのシャールが加わったわけなんですが、
癖が強すぎる部下を上手いこと手懐けているトゥリウスが凄い。
その手段が脳改造による洗脳というのが狂気的で更に凄い。

現代日本の知識を応用しての内政チートに、
次々と登場する頼りがいのある部下と小説家になろうのテンプレートをなぞりながらも、
その下地が狂いに狂いまくったモノで出来上がっているだけに、
中々人に勧めにくい内容になっています。
まぁ、そこがこの作品の面白さなだけに難しいところなのですが…

書籍化に伴い一部伏線が追加されたりと加筆もありますし、
しのとうこさんのイラストも魅力的なのでWeb版を読んでいる人にもお勧めです。

:: 2015/11/30 月曜日::

■[ラノベ]狂気で正気で本気な主人公「ウロボロス・レコード」1巻

ウロボロス・レコード1 (ヒーロー文庫)
著者/訳者:山下 湊
出版社:主婦の友社( 2015-11-30 )
作者サイト:山下湊
絵師サイト:シノノノート
絵師twitter:しのとうこ(@touco_shino)さん | Twitter

ヒーロー文庫の新作は例に漏れず小説家になろうからの書籍化ですが、
この作品は今までの小説家になろう作品とは一線を画します。
確かに異世界転生だし幼馴染みヒロインはいるし学園で俺SUGEEE的な要素はありますが、
主人公の性格と目的と手段が常軌を逸しているのです。

一度死に、魂が消えていく恐怖を文字通り心の底から味わった主人公トゥリウスは、
二度とあんな恐怖を味わってなるものかと、
生まれ変わった剣と魔法の世界で賤業と言われる錬金術を用いて不老不死を目指すんだけど…
目的のためならどこまでも冷酷で合理的になれるのはFate/Zeroの衛宮切嗣みたいで、
そのための手段として人体実験を厭わず、平然となしてしまう倫理観はジル・ド・レェのよう。
それくらいに狂気に染まった主人公なのです。

まず、齢8歳にして親に命じられて買うことになった死にかけの少女奴隷で人体実験をし、
そこから腹心のユニを育てていく過程も中々にクレイジーでしたが、
ユニの心の中もそれに染まったかのごとくモンスターになっているのが凄い。
トゥリウスに信頼してもらうために自ら脳改造を志願するとか、
狂っているという言葉すらも生ぬるいですよ。

留学先の学園で行ったという実験の内容も残酷すぎて凄い。
「生体としての脳機能と生命としての魂の相関」というテーマはともかく、
仮説を証明するために奴隷を脳改造してから殺して降霊させるとか、
その手段を発想できてしまうこと事態がおかしいんですよ。
マッドサイエンティストな教授と意気投合しているところからしてもアレですしね。

生まれた時からして実の母が亡くなってしまいましたが、
そこからトゥリウスの狂気に染まれなかった人たちが、
次々と不幸になっていく様子を見ているとどんどんSAN値が下がりますね。
特にラストのエミリーのくだりはクるものがあります。

今までにない面白さがある作品ですが、
万人に勧められる作品ではないので覚悟を持って読んでください。
少なくともFate/Zeroを読んで大丈夫じゃない人にはお勧めできません。
しかもこの1巻はまだまだ序盤ですからね。
これからどんどん酷くなりますよ…?

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