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:: 2013/1/21 月曜日::

■[漫画]双子の結婚式とカルルクの嫉妬「乙嫁語り」5巻

乙嫁語り 5巻 (ビームコミックス)
著者/訳者:森 薫
出版社:エンターブレイン( 2013-01-15 )
コミック ( 192 ページ )

ライラとレイリの二人の結婚式が遂に開かれる「乙嫁語り」の5巻が発売!
19世紀の中央アジアの結婚式というのはどういったものであるかを、
しっかりじっくり描いた圧巻の内容ですので読み応えはたっぷりあると共に、
天真爛漫な双子が花嫁ということで一筋縄ではいかない展開も見所です。

子供らしい無邪気さが残っているあの双子が結婚式の間ずっと座っているはずもなく、
花婿二人を巻き込んで色々やらかしちゃってる所も面白かったですけど、
そんな双子が「実家を出て他所の家に嫁に行く」ということをやっと実感することで、
号泣するシーンはその落差が際立っており心にジーンと来るものがありましたね!
まぁ、それでもやっぱりライラとレイリの我が儘に付き合わされる花婿二人の悲哀と、
それでも楽しそうな二組の新郎新婦を見ていると微笑ましいのがあるのも確かです。

そして後半からはアミルとカルルクの二人に話が戻ります。
二人の何気ない日常と手負いの鷹を治療する話なんですが、
特に後半は現代日本の価値観では残酷とも取れるけど、
自然に生きる人たちにとっては当然の処置を描いているのは流石だな、と思います。

そういった意味ではライラとレイリの結婚式で羊の解体を残酷にならない範囲で、
凄く丁寧に描いているのは良い仕事をしてるなぁ、と感じ入ります。
羊の解体を初めて挑戦する少年の興奮が描かれていましたけど、これは当然の事なんですよね。
今で言うと農家の親に初めてトラクターの運転を任された中学生の息子的と言いましょうか…
そういえば大学時代に講義でイヌイットの生活をビデオ撮影していたのを観たことがあるんですが、
スノーモービルに乗るイヌイットがトナカイを仕留めて村で解体する時、
子供たちは凄く良い笑顔を浮かべていたんですよね。
ことほど左様に獲物の解体というのはカッコイイ大人の仕事な訳です。

さて、次回からはアミルとカルルクの二人に焦点が戻るみたいですが、
ロシアの足音が聞こえる19世紀の中央アジアでどういった問題が起こるのか。
双子が住むアラル海の帰結も知っている身としては手放しで御祝いできないですが、
それでも続きが気になるので追って見ていきたいです。

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 Comments (1)

1件のコメント »

  1.  さて、毎度お馴染み、蘊蓄垂れのみゃさんです。遂に発売、乙嫁語り5巻。ばんざーいばんざーい。今回も森薫先生の描画は素晴らしかったです。本当に繊細なタッチで濃厚に描かれる先生の絵というのは素晴らしい……。
     そんなこんなで慌ただしくも双子の縁談が纏まりまして、実に手っ取り早く結婚の運びとなりましたがコレは結婚が「個人に委ねられた権利」ではなく「人間という種族が背負った義務」という面も併せ持っての事象ですね。年頃の男女は嫁に出る婿を取る、当然たる生物界の掟に従っている証拠です。その分、パリヤさんみたいに行き遅れてしまうとその個人どころか一族が白い目で見られるという、……まぁ良い面もあり悪い面もあり、何事も表裏一体です。今の所、パリヤさんは私の嫁ですがね?

     で、先ず触れられなければならないのはそういえば忘れていたなぁと云う、「カルルクが『一家の跡継ぎ』でサーミ、サーム兄弟は『(新しい)一家の主』」という点の違いです。私はモンゴルの風習を調べた途上でこの例を知っているのですが、どうも今回、描画されている地域もその風習に属する様子で其処をベースにお話しします。男兄弟は「上から順に家の財産をある程度、分配されて暖簾分けさせられ、そうして最後に残った男子が実家の家を引き取り跡取りになる」のが基本です。江戸期に長子相続制を厳密な掟とさせられた日本とは全く逆の末子相続制が一つ、乙嫁語りの世界では共通していそうです。イスラム圏では末子相続なんですかね?

     結婚式の最中、スミスさんが結婚式に饗される羊の解体作業について、

    「ええまあ、これだけの量、一度に見るのは」
    「いや食べる事は食べるんですけど自分ではやらないので」

     と述べている点、コレも結構、重要であったりします。というのもイスラム教徒は教典によって(賭博による、株式による、またはそれらに類する)利益の受領を禁じられているからです。貨幣経済というモノに馴染み難く、他にもやれ髭を剃るな酒を飲むな偶像を造るな断食をしろ肌を見せるなという根本的に厳格な禁欲宗教のイスラム教では基本的に作業の分業化(従業員を雇う)、ひいては他人を使う事によって自分が事業に直接、関わらなくとも作業が進む(労働の需要供給)という市場経済の形成というのが極めて難しいのは現代を見てもお解り頂けるかと思います。既にオランダが大航海時代に株式会社(オランダ東インド会社)を設立し、イギリスでの産業革命を経たキリスト教ルター派(プロテスタント)が見る、ひいては食肉を文化として持たなかった我々、日本人が見るこの光景はスミスさんの感想と極めて容易に一致するでしょう。日本の場合はコレまた江戸期に肉食の強固な禁止が部落社会を生み出す原因となった最大の汚点でもありますがね……。まぁソレは脇に置きまして。
     唯、原理的なイスラム教地域では女性が一生涯を屋内で暮らすのも一般的なので、双子の居る地域はまだかなり緩やかな風土の地域ですね。第一次世界大戦が勃発するまでは今回、人質事件があった今の北アフリカも比較的、平穏であったと聞きますが。

     スミスさんの「お坊さんにも位があったりするんでしょうか?」。
     あります。私も詳しくはないんですが、イスラム教で最も権威あるお坊さんは簡単に判ります。メッカに巡礼した事がある「ハジ(ハッジ)」の称号を持つお坊さんが最も偉い方です。白い帽子を被る資格を得るのですが、日本で云えば紫衣を纏った仏僧みたいな感じです。他にもメディナとか聖地は色々とありますが、キチンとした神学校で学んでかつ巡礼を果たしたお坊さんがより偉いという感じみたいですね。
     が、……ターバンですな? それに小麦粉を蒔くというのは大乗仏教にも見られる行為なので、コレは良く判りません。この辺りのペルシャ湾東側に詳しい御方にご指導お願いします(丸投げ
     スミスさん編のラストであの女性が再登場したのは、……感無量ですねぇ。

     アミルさん、「鷹は捕らない。彼らは天の使いだ」。日本でも江戸期に傷付ける事を禁じられた鳥類が存在します。というか今でも狩猟禁止の鳥は沢山、居ますが(ツグミなんか代表例)、江戸期ではそういった特に危ない部分の禁止事項に抵触すると「非人」に落とされました。前述、「獣を捕る人」は基本的に「穢多」ですね。神道に於ける血液の穢れと仏教に於ける食肉の禁止が習合した結果、日本人は動物の解体を避けるようになりますが一方、特に鹿革といった獣皮なんかは重要な軍需物資なので当然、どれだけ値が張ってもいざ鎌倉という折には絶対に買い手が付きます。故に江戸期より前まではそれ程までに嫌われる存在でなかった穢多も、江戸期になって身分が固定化されると三百年間、酷い事になります(各地を統治した各藩もソレを煽ったりました)。ソレでも穢多の方々は動物の狩猟を一手に担ったので金銭の権利を確固とする代わりにその汚名を甘んじて受ける訳ですが、明治維新で身分制度が崩されてしまうとその利権も脅かされて身分闘争が開始されます。余り大きな声では言えませんが、今でも食肉加工会社は割と利権の部分が大きいのはそういう理由です。その代わり、皮を剥がれて吊された牛や豚を延々と解体する作業というのは私も精神が耐えられないでしょうが……。食肉加工会社の冷蔵庫は凄いですぞ?
     と、話が逸れました。そんな訳で日本では江戸期になってからは鶴なんかが一部、禁鳥とされました。安土桃山時代では、有名な安土献立で鶴汁が饗されていたというのに、凄い振れ幅ですな。因みに日本弓道では矢羽根に用いられる最も高級な羽根が鷹の羽根で、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)によって鷹が禁鳥とされてからは高騰する一方ですが、まぁ無理に採る必要も無いでしょうな。

     二十七話では見事な追い込み猟のアミルさん、一矢で得物を仕留めます。お見事! ……が、現実の話をしちゃいますと大口径の銃でもない限り大型の獣はなかなか一撃必殺と行きません。矢が刺さっても刺さったまま逃げちゃうんですね。勿論、矢が急所に刺さると、或いは急所に刺さらないでも大抵は逃げる折に広がった傷と出血が原因で遅かれ早かれ力尽きるのですが、逆に力尽きるまでは全力で逃げます。この「矢は当たったが殺すには至らない」射撃の事を日本では「半矢」と呼びますが、半矢の獲物を追って力尽きるまで追跡し追い込むのが猟犬の仕事ですね。半矢状態の得物に止めを刺す矢は「止め矢」と呼びます。

     ……最後、二十七話はティレケさんが可愛かったです……(最低の〆)。

    コメント by Mya — 2013/1/25 金曜日 @ 2:08:59

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