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:: 2009/8/4 火曜日::

■[漫画]ジャコモの影とクローチェ事件「GUNSLINGER GIRL」11巻

GUNSLINGER GIRL 11 (電撃コミックス)
著者/訳者:相田 裕
出版社:アスキー・メディアワークス( 2009-07-27 )
定価:¥ 578
コミック
ISBN-10 : 4048679775
ISBN-13 : 9784048679770
作者サイト:JEWEL BOX

イタリアで数多くの重要なテロ事件の首謀者となってきたジャコモ=ダンテ。
その男が再びイタリアの地に舞い戻ったということで、
公社は俄然浮き足立ち、特にクローチェ事件で直接被害に遭ったジョゼとジョンは、
仇敵が目前にいるということで冷静さを欠いているのが一目瞭然でした。

ジャコモが主導するベテツィアでの鐘楼籠城事件の発生。
威信と意地を掛けた公社の突入作戦は義体の損耗を前提とした無茶なもので…
それでも義体の少女たちは恐怖を感じず臆せず突入し、
そして散って行くのは儚いという言葉だけでは表せないものがあります。

ジョゼなんかは普段はヘンリエッタを可愛がっているのに、
そんな仮面を被る余裕を無くしている辺りに憎しみの大きさが感じられるようでした。
だからこそ、トリエラとヒルシャーのお互いを想い合う姿は愛しかったし、
ペトラとアレッサンドロの情緒の豊かさが上手く対比されていたように思えたんですよね。

そして終盤では今まで断片的にしか語られなかったクローチェ事件が、
ジャンの回想で遂に全貌が現れていきます。
かつての祖父と両親、そして妹という家族。
堅物になったジョンの半生と、それを柔らかくした奔放な恋人との出会い。
結末を知っているからこそ切なさが半端なく、読んでて辛くなるのですが、
それでも読み進めてしまう面白さがあるんですよね。

あー、それにしてもヘンリエッタはどうなるんだろう…

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 Comments (7)

7 Comments »

  1.  あううううう……。
     私はベアトリーチェを「ビーチェ」ではなく「ビアーチェ」と呼んでいたんですが、嗅覚が鋭い娘って割と好きなんですよね。浮気できませんし、少しでも女物の香水がかかっていようなら、一週間は口をきいてくれなさそうです。……ビアーチェ自身はそういう感情が希薄そうですが、ベルナルドさんも、いつもの空回りに見えて、今回では少しだけ違う反応が貰えてましたね。……うあああああああああ……、せめて、トリエラの使用していた刃物がバヨネットではなくグルカ・ナイフであれば……。どうして突くことが専門のバヨネットを使用していたのですか、トリエラー!(涙) バヨネットは一世代前に使用されたボルト・カービン銃の装填時間を補うための銃取り付け型突入用武器ですから、刃物として個人携帯する分には現在、遥かに強力な武器があるんですよぅ。サイドアームでMP5-PDWとか携行していたも良かったですし、この際はあの狭い戦場なら9mmか45口径のハンドガンで良かったのです……(ベレッタM-93R何かが適任だったかも知れませんね。折良くGISの制式装備だったような気がします)。CQBがなっとらん! あそこでグイドを完全無力化していれば……。ああ、本当に尽く悔やまれます……。
     はっきり申し上げまして、福祉公社は支給される武器が偏りすぎです! 軍警は制式採用の支給品を用いなければならないのは分かるのですが、ヘンリエッタはP-90、トリエラのトレンチ・ガン+SIG-P230(P232でしたっけ? 義体の超人的身体能力で9mmショート? という気もしますが)、アンジェリカは……、ステアーAUGでしたっけ? リコなんてドラグノフですよ!? なーんで火力の上で敵を上回ろうという思想が無いかー! 東側の火器すら仕入れることが出来るのですから、例の凶悪なドラム型弾倉を用いた12連殺戮用ショットガンの入手ですら訳ないでしょうに……。ビアーチェのメインウェポンがマイクロUZIって彼女を殺す気ですか!? 毎分1200発の弾薬消耗率は厳しすぎますよ!? グレネードですらドラム型の弾倉が多くなってきたというのに君達は……。
     しかし、アレッサンドロの分析からすると、ジャコモはテロリストの中でも最も厄介な類ですね。主義主張もなければ教義もなく、絆すら曲げる。戦えさえすればそれで良いという感じですね。しかし、一期生相手にNTWを使用するとは……、許すまじ! アレって、確か南アフリカ製の14.5mm対物ライフルでしたよね?
     ていうか、私が参謀課長なら、絶対に「ジャコモが鐘楼にいない可能性」は高いと判断します……。アレは殉教するような柔い敵ではない。破壊のためならバスク解放同盟だろうが地下に潜伏した秘密警察の類だろうが、使えるものは何でも使う類ですね。福祉公社は「ジャコモ」という人物のプロファイリングに失敗してしまいましたね……。確実な退路が確保されていない上に高所からの脱出となるとヘリのピックアップしか無く、メインローターが塔に接触する以上、横付けは無理。従って縄梯子かホイストしてもらうかしか脱出路はありませんが、銃撃戦が始まってしまえばその様な行為はむざむざ的になるようなものです。従って塔に立てこもるのは殉教する人間のみ。ジャコモはそんなタマではありませんね。
     ヘンリエッタも何故か過去がフラッシュバックしてきましたね……。やはり一期生は……。リコとクラエス、トリエラにあとどれくらいの時間が残されているのか、不安でなりません……。トリエラが召されたら、ヒルシャーさんは本気で墓守になっちゃいそうですね。福祉公社の中で、ヒルシャーさんが最も義体を長生きさせる術に長けているような気がするんですが、それはヒルシャーさんには辛すぎますね……。
     キアーラは橋頭堡の確保に徹していたおかげか、生還したようですね。シルヴィアは殉職してしまいましたが……。しかしあの作戦、何かとことん、不手際があるようで誰が立案し指導したのか、ちと問い詰めたい所です……。突入路が一直線である以上、アクティブ・スタンスで突入してますから、対人地雷などの罠やアサルトライフルの十字砲火が容易に予想されるわけで、そこにペンシル・ミサイルなど対人ロケットが加わると苦しいことこの上ありません。せめて84mm無反動砲などの一部、重火器の使用を許可していただきたいですが、幾ら軍警といえども市街地では使用不可なのでしょうかねぇ……? しかし40mmグレネードは使用してましたから、少なくとも突入口のドアはグレネードの黄燐弾か炸薬弾で吹き飛ばした方が良かった気がしますね……。
     事実、テロリスト12名殺害に要した被害がGIS殉職者10名に加えて義体2名。幾ら何でもこれは「対テロ特殊部隊」の名を返上しなければならないくらいの大失態ですね……。エンテベ空港事件ですとかイラン大使館事件を見ると霞むことこの上ないですが、一方でカーターのお馬鹿さんが指揮したイランのアメリカ大使館事件なんかは、もはや喜劇の領域です。
     ジオ・ブリーダーズもまさかの代替わりを経験してしまいましたから、もしかするとガンスリも一期生から代替わりをする可能性も……。ジャコモはこのまま国内に潜伏するのですかね? 現在のテロリズムから考えれば、そのまま勝ち逃げして再び国外逃亡、というパターンですが……。えーっと、……頑張れトリエラ!(トリヒル大好きです

    Comment by Mya — 2009/8/4 火曜日 @ 6:16:01

  2. HINAKAです。

    フラン様

    正直、今回は既に述べられているMya様の仰る通り、対テロ対策がズサンだとしか言えません。
    まるで1期生を使い捨てれば、どんな作戦でも成功するといわんばかりの乱暴さ……。
    それはともかく、拙ブログで「ファントム・レクイエム~」からの流れで、大口径長射程ライフルに注目しました。というか、個人的にせざるを得ませんでした。

    そして、ここで描かれた南アフリカ製ダネル・NTW-20なんて、化け物ライフル(ライフルという概念で良いのでしょうか?)カタログ有効射程距離最大2.400メートルって、何?発射音よりも先に、着弾するという凄まじさ!
    しかも1発目で、標的に1メートルの誤差というのが凄過ぎです。本当に、テロによるテロの為のテロを行うテロリストなんですネ。現在行方不明の、あの善良で頭が良く優しく美しい爆弾作りのお嬢様が、懐かしい!

    「あんな娘の将来の為に、私達は戦うのよ!」

    ヘンリエッタを見て、自らの健気な決意を語る顔女の純粋さが、輝いて見えます。
    まったく、ジョコモも公社も汚いッ!その中で、相変わらずペトラのデレデレぶりと、無事に戻ったトリエラに、一抹の期待が……。

    勝手ながら、主にダネルNTW-20について述べている拙ブログ記事を、トラック・バックさせていただきます。

    それでは、また。

    Comment by HINAKA — 2009/8/4 火曜日 @ 22:56:22

  3. マンガ原作「ガンスリンガーガール」11巻が発売!対物大口径ライフル・ダネルNTW登場!

    『GUNSLINGER GIRL(ガンスリンガーガール)』・11巻が発売されました。 特に内容的には、御紹介するべきものもないのですが、個人的な恥を晒す必要があります。 GU…

    Trackback by 『あんのん』ブログ・HINAKAの雑記です! — 2009/8/4 火曜日 @ 23:00:07

  4. >HINAKA様

     小生の拙い作戦立案に賛同していただき、感謝の念に耐えません。私も所詮は俄仕込みなので、この程度でしか立案、並びに作戦指導しか出来ません(位置づけとしては情報将校といった所ですか)が、全容が知れない上に治安組織に対する知識が足りないので世間一般からするとどうなのかは分かりかねるのですが、私の知識は軍のものをベースとしていますので、まずはうっすらと明るみに出てきた福祉公社作戦二課の組織体制に些か疑問を抱いているところです。
     昨日はかなり寝ぼけた文章を記してしまいましたので、もう少し気の利いた文章を残します。これに関しましてはフランさんにも卓越した知識があると思いますので、疑問が御座いましたら補っていただけると嬉しいです。
     えー、……何と申しますか……、まずは「義体」という特殊な戦力を主軸に置いている為、消耗率による補充兵が全く見込めないので、此処で耐久使用期限の差し迫った一期生を抱えた二課は「差し違える」か「温存する」かの二択に迫られたのだと思います。意志決定を経た結果、「損耗委細構わず前進せよ」とのお達し。
     いえ、この判断自体に異議を唱えるつもりはないのです。軍に消耗は付きものなのですから。が、「損害を許容する」事と「損害を出す」事は全く別で、作戦内容が余りにも楽観に過ぎるというのは、前のコメントで発言させていただいたとおりです。あくまで作戦参謀という立場に自身を置いて仮定を語らせていただきますが、そもそもがジャコモ・ダンテという存在が確実な退路を確保されていないような状況に、自身を投入するわけがないのです。「卑怯だ!」と仰るかも知れませんが、ジャコモ・ダンテは五共和国派でも、アウトローの分野で確たる実績を残している実力者です。いうなれば分裂激しい五共和国派にて唯一、作戦実行能力がある指揮官ですので、五共和国派からしても失いたくない人材ですし、何より彼自身が死ぬことを一切、考えておりません。
     そういう点でまず、福祉公社は「ジャコモ・ダンテ」という人物のプロファイリングに失敗しました。これが致命的な失態です。唯一、そのことに気がついていたアレッサンドロも、「気がついていた」事だけで十二分に評価できるでしょう。が、上層部には「そもそも理解されない」として具申しませんでした。これは福祉公社二課の立案、計画、実行を担う上級将校と戦務体制がかなり遅れているのではないかと予想されます。今巻で露呈したのは、「立案指揮には課長とジャンのみにも関わらず、場を統一する直属の最高指揮権限は作戦課長のみ」という点です。
     はい、私が疑問を持っているのは、福祉公社二課の「組織体制そのもの」です。情報を精査する情報将校も不在、作戦立案、及び指導を担う参謀課も不在、組織体制が余りにも脆弱に過ぎるのです。恐らくは情報も公安警察などの外部に頼っているのでしょうが、福祉公社という組織がそもそも、「戦闘のみに特化された集団」ではない点が最大の欠点なのではないでしょうか? 唯でさえ課員の少ない二課に情報の精査と立案指揮まで委ねては、リソースが余りにも集中しすぎて非効率すぎます。少なくとも福祉公社自体の上部にワンクッション、作戦課と情報課を置くべきです。

     続きまして五共和国派の武装なのですが、まずは対物ライフル。この世の軍隊で対物ライフルの主流派はブローニングM82なので、弾頭口径は12.7mmです。が、12.7mm対物狙撃中ですら2km離れた距離から軽装甲車を貫通せしめるだけの威力があるのです。人間が喰らえば勿論、真っ二つで、実際に湾岸戦争にて1.5km地点から人の胴を真っ二つにしたという報告が上がっております。7.62mmのNATO.308弾を上回る口径の銃は、ハーグ陸戦条約によって「んなどでかい鉄砲で人を撃つなんて馬鹿なヤツはいるか」という訳の分からない理由で、自動的に「対物ライフル」に位置づけられますが、大東亜の時代からバンバン人に向かって打っているのが現実です。現状、歩兵携行火器で最大口径の狙撃銃は確か、ステアーのIWS2000に用いられる15.2mmだった筈ですが、そういった大口径狙撃銃の中できちんと生産ラインに乗り制式採用されている銃は、それ程多くありませんし、大概が12.7mmで収まってしまいます。
     というわけで、ジャコモが逃亡先の南アフリカ共和国でNTWを入手するのは、彼のコネからしてさほど難関ではないと思われます。南アフリカ共和国も「アフリカ大陸では最も治安が安定している」とはいえ、軍からの武器の横流しはそれ程、厳しくはないでしょう。が、それをEUに持ち込むことに成功したというのはまた別問題でして……。入域チェック甘いなEU!?
     密入国ルートは地中海経由か、エジプトやヨルダン経由で陸路か、トルコ側からハンガリーへと抜ける道か。よく国境警察に捕まらなかったものです。EUはアフリカ大陸側からの不法入国民が鰻登りで、ボーダーが厳しいですからね。……うーん、といいつつも、水際で挙げられるような相手なら苦労はしないのですかね……? しかし、常に後手を踏まされるのは私の好むところではありません。そもそも、「予防」に関しては日本でいうところの公安警察と、恐らくは内務省の対テロセクションが窓口になっているはずですから、ジャコモの密入国を許してしまったことに対しては、二課自体には罪はありませんね。二課の担当は荒事なので、荒事に対する評価を今一度、させていただきたく思います(昨日の評論はかなり寝ぼけた文章を記しておりましたので)。それに、もっと大物の500kgクラスの戦略爆撃機に搭載する様な通常弾頭まで密輸されたという点に「何をしとるんだ、EUの警察機構は……」と首を捻らざるを得ません。テロの防止に最も有効なのは水際作戦ですから。
     さて、肝心の作戦面ですが、まず、マスコミなどの目を避けるため、この場は短期決戦が選択されました。この情報統制に対しての判断は特に問題ありません。長引けば長引くほどこの事件はマスコミを通じて彼らのプロパガンダが一般家庭に放映されることとなり、無料で五共和国派に荷担していることと同じになるからです。恐らくは他にも様々な政治的要因があるでしょうが、軍人と政治ほど相成れないものはないので省略。ひとまずはお仕事(任務)を考えましょう。
     任務完遂条件(オペレーションズ・クリアー)は「ジャコモ・ダンテの捕縛、もしくは遺体確認」。本作戦について人質救助は度外視するものとするという破格条件。作戦遂行要因はGIS数個分隊と福祉公社二課の「兄弟」六組。……戦力的には問題ないように思えます。先だっての通り、欲を申せば重火器の使用も許可していただきたいところなのですが。
     で、作戦実行の段階なのですが、問題は前の書き込みでも触れましたとおり、陽動作戦側の突入が余りにも無鉄砲すぎるという点です。まあ、神経系ガスのタブンや皮膚径行摂取系ガスのマスタード・ガス等が使用できれば一番とってり早いのですが、そもそもが作成と保持、使用を条約で禁じられていること、周辺住宅への被害が想定されることの二点より却下です。で、強攻策はアクティビティな突入となるわけですが……、あれでは幾ら何でも無謀すぎます。兵糧攻めも「人質が順々にメディアを通じて殺されていく様を放映される」可能性があるので、政府側が使用できないのはよく分かるのですが、既に鐘楼を占拠されて数日。敵の陣容も固まっていると判断するには充分すぎる材料が整っていたにも関わらず、無謀にも鐘楼入り口の扉を強行突破。それは当たり前に罠にかかりますって……。
     重火器の使用が不可という前提で闘うとなると、火力で押すという手は使えません。が、あの作戦では幾ら何でも拙速に過ぎます。作戦中では最大火力を持つ武器として40mmグレネードが使用されているので、第一難関である「正面ドアの突破」は三通りの方法が考えられます。

     一つ、グレネードで徹甲榴弾や遅延信管の榴弾や音響閃光弾を徹底的にぶち込んでドア自体をロングレンジから破壊、と同時にこの方法なら密閉された堅固な石材建築の造りを利用して部屋内にいる兵力をかなり減らすことが出来ます。

     一つ、従来通り、12番ゲージのスラッグ弾を用いて扉のみを破壊。最もオーソドックスな作戦で、故に作戦の遂行確率も高い確実な作戦です。

     一つ、橋頭堡を確保したシルヴィア、キアーラ二名が形成炸薬を用いて扉を爆破する。爆破するといっても、実は一つ前のショットガンを用いた作戦と殆ど代わりはありません。要は、スラッグ弾で破壊するはずの鍵部分と蝶番部分をプラスチック爆弾で発破する方法です。

     火力に頼らず迅速に事を慌ただせず運びたいのなら、第三案でしょう。TNTに信管を埋め込んでデト・コードで接続し発破。破壊するのは五箇所のみですから、準備に数分も必要ありません。GISが敵を引き付けてくれれば、充分に遂行可能です。で、爆破しても即座には突入せず、スタン・グレネードか、本物のグレネードをごろごろ投げ込めば充分に無傷での敵制圧が可能です。というか、ブリーフィングで彼女達は何を説明されたのでしょうかね? 敵の本丸が「塔の最上階」である以上、当然のことながら「エレベーターの電源は落とされている」為、裏を返せば階下にいる敵は増援が見込めなければ退路もない、「唯の捨て駒」です。少なくとも一騎当千の義体が二人とも健在であれば、エレベーターを確保するのは容易であった筈ですので、従って一階を抑えるだけで「正面の突入員も揺動に徹する必要はなく、攻め入ることすら可能となり、結果として掃討作戦が二段構えで遂行できる」事になります。無論、階段側にも敵兵力は配置されているでしょうが、予備を保持しておく場所がないので、予備指定の兵力は無しと考えて良いでしょう。塔の各階に配置されている兵力は、あくまで突入を防ぐために全力で配置されていると考える方が妥当です。入り口の制圧が完遂すれば、幾らでも階上に兵力を送り込むことが可能となるので、敵戦力を完全に分断することができます。

     というわけで、個人的には「どうしてあそこまで焦ったかな?」というのが正直な感想ですね。HINAKA様も共感してくださったように、余りにも作戦が杜撰すぎます。「損害覚悟」所か、あれでは「玉砕上等」ですよぅ。突入時間も、普通は敵の集中力が最も低下する払暁を選ぶものですが、何故にあのような白昼に堂々と押しかけたのでしょうね? 理解不能です……。
     あとはやはり、普段の作戦と違って隠密裏に進める必要がないため、完全武装を整える余裕があるという、二課にしては珍しい「攻め手側」に回った作戦だったのですが、前述の通り福祉公社二課の面々の装備不充実振りが目に余りました。トリエラも分隊配備ならショットガンを所持する事に意味もあるでしょうが、フォローマンがビアーチェ一人である以上、ショットガンでは瞬間制圧力が余りにも低すぎます。彼女のためにもメイン・ウェポンはサブマシンガンにすべきでした。これはビアーチェも同様で、幾ら何でもマイクロUZIはちょっと……。フルオートの暴れ馬っぷりではMAC10にも並ぶ悪名高き銃ですからね……。
     そして、必ずサイドアームを所持すること。ハンドグレネードを数種類、所持すること。ボディ・アーマーとヘッドギアを標準支給品とすること。幾ら何でも敵城に攻め込むんですから、せめて装備は万端で挑むべきですね……。

     えー、少しだけ政治問題にも触れておきますと、イタリアの南北格差問題は「実在します」。というか、北イタリア人は南イタリア人を同じ国の人間とは見ていません。それどころか、かなり蔑視しているみたいですね。ミラノ工科大学や各種法科大学など、著名な大学が全て北部に存在するのもその為で、EUという枠組まで出来てしまった以上、「本気で南北分離を考えている人がいる」のは歴然たる事実です。イタリアを統一し、ヴァチカン市国を独立させるという妙手を案じたのは、実はかのムッソリーニなのですが、彼が追放したマフィア(シシリア出身の犯罪組織集団)やカモッラ(ナポリの犯罪組織集団)、シカーリ(ローマに縄張りがある犯罪組織)をアメリカが逆に、追放された彼らをイタリア本国へ帰還させることと引き替えに、戦時下の秘密工作員に仕立て上げたという歴史があります。これがアメリカにてアル・カポネらを筆頭としたマフィア組織が社会を牛耳る原因となった自業自得な事件で、フロント企業が公共事業にまで完璧に食い込まれている州すらある始末。当時のルポルタージュを見ると(折しもKKK等が全盛期であった時代ですね)、その凄惨さは本気で目に余ります。
     しかし歴史的事実として、ナポレオン失脚後の豪腕政治家、オーストリアの宰相メッテルニヒに「イタリアは地理的名称であって、国の名称であってはならない」とまで断言されたことは有名で、事実、ローマ帝国滅亡後、一度としてこの半島が政治的に統一された歴史がないのです……。ミラノなどの北部のイタリア人は、どうやらローマ以南を完全に「お荷物」と捉えているらしく、その象徴として「北部同盟」という政党が現実として存在する訳です。北部の方にとって現存のイタリアという国家的枠組の有用性は、EUが出来た今、ワールドカップの時ぐらい、というのが本音だそうですよ。
     余談ですが、政治的背景は分からないのですが、「クローチェ事件」と殆どまるきり同じ事件が、過去にイタリアで起こっています。1992年にマフィアの摘発で国民的人気を得ていたジョヴァンニ・ファルコーネ判事が、シシリア島のパルレモにて高速道路で移動中、道路にしかけられた爆弾で殺害されているのです。怖いですね……。
     テロリズム全盛の時代のヨーロッパでは、完全防弾の2トンを越えるロールスロイスが、マンホールにしかけられた100kg程のTNTで上空に吹き飛ばされ、電柱に引っかかってぶら下がったという驚愕に値する事件まで起きています(勿論、乗車していた人間は全員、死亡)。確か、フランスかどこかだったような……? 国家行事で使用される道路の下水が警察の爆発物処理班によって入念にチェックされ封印(シール)されるようになったのも、この事件からだったはずです。怖いですねぇ……。

     では、再び長々と失礼しました。それにしても、ビアーチェには生きていて欲しかったです……。11巻を読んで以来、ちと気になってガンスリを一巻から読み返しているのですが、一期生の最初期ロールアウトは一体、誰なんでしょうね? 前半では完全にアンジェリカということになっているのですが、10巻ではヒルシャーさんの回想で、トリエラの横にもう一人、女性が横たわっています。これは恐らくクラエスだと予想しているのですが、果たして誰と誰が同期なのか、ちと混乱を来しているところです、うーむ。
     しかし、ヘンリエッタは本当に怖い未来が予想されるようになってきましたね……。エルザとラウーロの様な結末にならないことを、切に祈ります……。

     あ、本当に余計なお世話かも知れませぬが、ちょこっとだけ。幾つかのエントリーに誤字を発見しましたので、ご報告致します。
     まず、このエントリー。ジョゼの兄は「ジョン」ではなく「ジャン」ですね。ジョンは英語発音の名前です。地名も「ベテツィア」は「ベネツィア」ですね。美しき水の都。あと、8月2日のエントリー「締め切りー締め切りがー」にて、「朝霧の巫女」並びに「妖の寄る家」に登場する「こま」さんが「たま」さんになってます。宜しければ表記訂正をしてあげてください。
     それでは!

    Comment by Mya — 2009/8/5 水曜日 @ 5:32:48

  5.  初めまして、HOTと申します。
     コメントなど見ていて何点か思うところをつらつらと。
     今回の作戦の最大の失敗はジャコモに対して恨み骨髄のジャン、ジョゼ兄弟を作戦に関わらせた事ではないかと。
     ジャンは特に作戦立案に関われる立場ですので、幾ら冷静に見えてもはずすのが常道でしょう。実際、皆さんが書かれているように無茶のありすぎる作戦となっています。
     (ふと思ったのですが、今回の作戦の指揮権はGISではなく二課の方にあったんですよね?この作戦案に対してGISから文句なり修正案なり出なかったんでしょうか?)
     この辺はフラン様も書いておられましたが、ジョゼすらヘンリエッタに対する気遣いをする余裕がなくなっている始末でしたし。通信内容なども完全に冷静さを失っているそれでしたし。
     その点ヒルシャーはあの悪条件の中何とかトリエラを生還させようとできる限りの手は打っているように思えます。
     ペトラとアレッサンドロ共々、良い対比だったように思えます。
     次に、対物ライフルですが恐らく試射して癖を掴んでいるものと思います。まあそれにしても良い腕なのは確かですが。
     これは対物ライフルに限りません(普通の狙撃ライフルでもあること)が初弾で温まった銃身は同じ所を狙っても必ずずれます。もちろんどうずれるかは一丁ごとに違いますから、2発目でドンピシャというのは偶然でなければどこかで試射をして癖を掴んでいた事になります。どこで試射したのかは気になりますが。(苦笑)
     二課の装備に関しては疑問も残るところでしょうが、ハンドガンに関しては義体が子供という事もあって安定したホールドをするにはやはり小型になりやすいというところでしょう。
     メインアームは手以外の部分でも支えられる(スリングや、ストックなど)し、トリエラのように取り回しで問題が出ない限りはかなり自由度がありますね。
     ただ、今回の突入の際の装備はどうかというと微妙なラインではありますね。慣れた武器で、という発想も間違いではありませんし、敵しかいない狭い場所の制圧という意味ではショットガンは無難な選択にも思いますが…マイクロUZIは確かにちょっと心もとないのは確かですね。
    撃つのが義体という事で暴れる銃を押さえ込んで一点集中攻撃は可能ですから弾数さえ用意しておけば取り回しの点では文句なしなんですけど…拳銃弾を使用したサブマシンガンが減っている昨今を見ているとやはり火力不足は否めませんかねぇ。
     義体の順番はWikiペディアによると、1番アンジェリカ、2番トリエラで、3、4番がリコとヘンリエッタだそうです。ソースが不明なので正しいかは不明ですが。
     まあ、気が付いた点をつらつらと書いてみました。
     それではこの辺で失礼します。

     P.S.シルヴィアが初登場で個人的にストライクだったので死ぬと判っていても生き残って欲しかった。(苦笑)

    Comment by HOT — 2009/8/6 木曜日 @ 9:20:53

  6. >HOT様

     あぅ、私なぞのコメントに付随していただき、感謝の念もありません(涙)。フランさん、コメントが伸びてしまって申し訳ないです。

     えー、私のコメントを記す前に、一つ前のコメントにて誤表記が御座いましたので訂正をさせていただきます。12.7mm×99弾を用いるM-82系列の世界ベストセラー狙撃銃を作製しているのはブローニング社ではなくバーレット社の間違いでした。ここに謝罪を以て訂正させていただきます。尚、こちらもベストセラーであるM-2重機関銃はブローニング社の作製で間違い御座いません。

     HOT様は実に良いところを指摘してくださいました。私は当然のものとして指揮権が福祉公社にあるものと思いこんでいたのですが、そういわれて初めてそこに根拠がないことに気がつきました。前のコメントにも「内務省の対テロセクション辺りがカウンター・パートを務めている」と記したばかりでしたのに、どうして気がつかなかったのでしょうね? 情けない限りです。
     前述の通り、現在、私は「GUNSLINGER GIRL」を全巻、読み返している最中なので、その辺りについて丁度、根拠を纏める知識が備わったところですので推測ですが記載いたします。「社会福祉公社」は基本的に1990年代までの零中隊やイラン大使館事件を境にしたSASの様な存在をもう一段上回る組織で、「公式発表で存在を認められていない」イリーガルな特殊作戦群です。が、社会的地位としましては実に、社会福祉公社の作戦部長モニカ・マリア=ペトリス女史が報告を口頭でイタリア国首相に報告している点を見て、福祉公社という組織は政府ではなく首相直轄の組織であることが予想されるため、逆説的に考えれば、

    「作戦部長モニカ・マリア=ペトリス女史が報告を口頭でイタリア国首相に報告している」
     ↓
    「直属の上司はイタリア国首相」
     ↓
    「社会福祉公社のトップはイタリア国首相」=「社会福祉公社は首相直轄の組織」

     という推理が成り立ちます。この点からすると、彼らの政府内発言力は、限定的ではありますが局部的にはかなり強く、それが発揮されるのは端的には「五共和国派が事件に絡んだとき」であると推測されます。つまりは福祉公社は「五共和国派のテロ活動に限定、専属する対テロ組織」という考え方が出来るため、「ヴェネチア、サン・マルコ寺院鐘楼占拠事件」では明確に五共和国派が作戦を指導している事が判明していたので、イタリア軍警と指揮権が衝突するように見えて、実の所は「組織的に首相直轄である福祉公社が上位に位置する」為、本作戦指揮権は実質的に福祉公社が取得したものと予想できます(表向きは社会福祉公社が「軍的行動を取る組織ではない」ので、彼女達、義体の殉職は決して報道されることもなく、「軍警対テロ特殊部隊GISが鎮圧に当たり大量の死傷者を出した」としか報道されず、これは鎮圧作戦が成功しても同様です。福祉公社が決して表舞台に出ることは絶対にないのです)。唯、普通の常識で考えれば、幾ら首相直轄で組織的には上位に当たるとしても、軍警と社会福祉公社は管轄が全く異なるため、法曹上の判断でも軍事組織的な問題でも、「直属組織ではない軍警を直接、指揮することは越権行為に値する」ため、相当の超法的措置があったか、さもなくば、かなりの書類を裂いたかのどちらかでしょうが、福祉公社が裏で行っている行動の非合法面の度合いを考慮すると、恐らくは政府内で軍警に対する指揮権を持つ政府要人と予め、手続き関係が整備されていたものと想像できます(日本では警察庁が必要に応じて各都道府県警を指揮監督し、警察庁を国家公安委員会が統括し、最上部は内閣総理大臣です。果たして誰とナシを付けたかというお話は、イタリアの組織図が頭にないのでよー分かりません←無責任)。
     唯、先だって「『端的には』五共和国派が事件に絡んだとき」と記した通り、福祉公社の存在意義というものが果たして「五共和国派の活動に限定されるのか」という疑問はあります。モニカ作戦部部長がイタリア国首相と会談していたときに、五共和国派の活動停止、及び瓦解が福祉公社の作戦停止と符丁するという発言(単行本九巻末尾)を交わしていましたが、長期的視点で見れば恐らくは「福祉公社の対テロ活動は極めて現実的である国家分裂危機に対して行われている」と考える方が、国家機関としての有り様は自然です。英国とアイルランドの双方が領有を主張する北アイルランドにおけるシン・フェイン党の下部活動組織がIRAであった様に(公式には勿論、シン・フェイン党は否定していますし、武力闘争が白熱するに従って、後年の手段自体が目的化したIRAとは実際に距離を置きたがっていました)、現実問題としてIRAのカウンター・パートに当初はアルスター義勇軍、後にSASとSIS(旧MI6)が当たっていた以上、北部同盟の活動組織である五共和国派の瓦解が即座に福祉公社の解体に繋がるとは俄に考えづらいです。福祉公社の問題点は一点、肉体を原型が残らぬほどに大幅に改造し、テロリスト相手に人体実験をしているという非合法性の一点に尽きます(これを非道徳性と称しても、道徳とは国や民族毎に異なり、更には法的拘束力を持たない以上、それを問うたところで無意味です。同じくして非人道性も似たり寄ったりで、結局の所は最終的に、国際法で禁じられている範囲の人体実験を行っているという一点に終着するのです。法治社会体制が世界の主流である以上、この国家観が標準から過ぎ去るまでは、他者を非難するためには法的論拠が必要となります)。……むぅ? 何か相田裕さんの無断で設定を肉付けをしているような気がしないでもないです(実は「GUNSLINGER GIRL」は同人の頃から購入させていただいてます)。まぁ、気にせず行きましょう。概念的論拠は恐らく間違っていないはずですから(暗に「間違っていたらご指摘お願いします」という発言)。イタリアの南北問題も本当に根が深いですから、実際には相田さんが描かれるとおり、政治闘争からテロリズムに発展しても全く不思議はないのですが、アレッサンドロが発言しているとおり、この国がローマ帝国を前身としているとはとても想像できないくらい、イタリア人の国家帰属意識というのは相当に薄い模様で、それが幸いしてか北アイルランドのような血みどろ惨劇を繰り返さずに済んだ一方で、左的活動は一時期にかなり隆盛を極め、この国の赤軍の活動資金が南部イタリア市民のカンパから一部分、成り立っていたという事実もあながち全否定はし辛い方面があります。現状では南部が間違いなく北部経済を引っ張っているのは確実で、いっそ「分離放置するくらいなら日本に売ってくれ」と、昨今の世界食糧事情から鑑みるに、申し出たいくらいです。南部イタリアは平原が主を占め、更に地中海性気候であるため気候も日本に酷似し、EUに属する面からしても安全保障面、政治側面の二面に於いて完璧といえるほどに全く問題がなく、可能なら農協と全農林の延命のためだけにだぼだぼ注入している無駄な7兆円越の国家予算を全額、こちらに投入したいですよ全く……。フランスのように莫大な資金を垂れ流そうとも、実質的に目に見えた効果があればよいのです(フランスの農業保護政策も公金漬けですが、日本と違う点はフランスがカロリーベースでの自給率を70%まで賄えている点です)。が、日本の耕作可能面積は全てを収穫可能農地に回復させたところで到底、国民全員を賄うだけの食料が生産できないのです。南部イタリアを分離独立させた上できちんとした生活水準に符合する価値の紙幣を発行すれば、南部イタリアに住む国民の生活向上に貢献できると共に、EUに属する利点から欧州市場にも積極的に参戦できますし、米国一辺倒の安全保障も改正、ユーロファイターやベレッタ、ベネリといった優秀な会社とも接触が図れるので良いこと尽くめなのですがぁっていつの間にか話題が政治にシフトしてますね。申し訳ない。話題を戻します。……本気で「日伊二国管轄共和国」のような感じで独立させて、優秀な日本の農家方々を移住させられないですかねぇ……。バーターで優秀なイタリア国籍人に対しては平行して一定条件を満たせば日本国籍を与えるようにしてしまえば、人材面からも国策面からも両面で安心が持てるのですが……。旧ユーゴのチトー大統領みたいにならなければ良いのですが……っていかん、しつこい上に愚痴っぽい。上では良いところばかり挙げてしまったので、敢えて一点だけ付則しますと、地中海南岸に接して怖い国が並んでいる点でしょうかね? 離島問題ではシシリアやコルシカの統治問題なども山積みです。アフリカ大陸からの違法移民斡旋は非合法組織の主要な資金源で、EU(正式名称は「欧州連合」。前身はEC、その前身がEECですが、目指すところはそれぞれの時代に合わせて柔軟に変化しているところが素晴らしいですね。EECの前身が根底のECSCで、二度の世界大戦勃発原因国を発生させた事を痛感して、言葉の修辞を一切取り払うのなら、一度、敗戦して多大なる損害を被ったドイツが二度までも這い上がった上で二度とも蜂起したという点を鑑みて、欧州国同士、敢えて具体的な国名を挙げるのならばドイツとフランスが二度と喧嘩をしないようにと設立されました組織です。まぁ、二度も世界規模の大戦にまで発展するような、露骨な嫌がらせをドイツが受けたのも間違いなさそうですし、フランスはフランスで、あなたの国にも身に覚えがありますよね? ということで、ノルマンディーやゲットー、アウシュビッツなんて二度とゴメンだと、表向きにはナチス・ヒトラーに全ての罪を被せスケープゴートに仕立て上げる一方で、裏面ではきちんと工作していたわけです)が成立して以来、国境の越境に際してパスポートチェックをオールフリーにしてしまった弊害で「一度、湾岸警察、及び国境警察を振り切ってEUに入境してしまえば、国家組織のお世話にならない限りはまず、強制送還されない」という事実上の体制が出来上がってしまったのです。国境がシームレスになったにも関わらず、警察組織はまず始めに国家権限が優先されるため、まさしく作中にあるとおり、ヒルシャーさんが属していた欧州刑事警察機構は極めて権限が限定されています。捜査権限がなかったにも関わらず独断で動いたヒルシャーさんとラシェルさんが二人で解決したトリエラの事件は、オランダの警察が手柄をかっ攫い、かつヒルシャーさんは処分されてしまいました。それはつまり「越権行為」かつ「主権侵害」だからです。現行のユーロポールには捜査権も逮捕権も決して与えられることはなく、出来るのは情報提供と情報共有の側面的活動のみです。インターポールの欧州版と申し上げれば解りがよいでしょうか、欧州刑事警察機構にFBIを連想された方も多数いらっしゃるでしょうが、あれ程までに途轍もない権限は流石に与えられていませんし、捜査権すらなく、組織規模も著しく小規模です(以上の理由から恐らく、ヒルシャーさんが銃撃して死亡した人間が確認できた場合は、有罪無罪の如何に関わらずヒルシャーさんは致死傷罪等で起訴された可能性も高いです。それにも関わらず彼が処分のみで済んだのは、推測ですが死体どころか致傷者の一人すら見あたらなかった為に、起訴のしようがなかったのでしょう。その証拠として、銃撃戦の場で殉職し、迅速な撤退のために彼女の遺言から、やむなくトリエラの命を優先して置き去りにせざるを得なかったラシェルさんの遺体が行方不明になっているからです。これは重要な点なので敢えて記載しますが、ヒルシャーさんが見舞った「ラシェルさんのお墓に彼女の遺体は埋葬されていません」。悲しいですが現実です。そういうわけで、トリエラがどうしてあそこまで怒ったのかというのは、捜査権すらない欧州刑事警察機構の所属捜査官が自分のためだけに越権行為を犯し殉職者を出して、挙げ句にその「物的証拠」である自分の身柄を強奪して逃げたからです。実際に荒事を職務とするトリエラなら、ヒルシャーさんが犯した罪の重さが痛いほどよく分かるでしょうから。分かりやすく日本に当てはめるなら、国家公務員試験Ⅰ種に合格して警察庁などに入庁した将来の官房長官候補が、一人の物証にしか過ぎない娘のためにその後の全人生を、犯罪者として棒に振っても構わない様な行動をした様な感じです。……ヘンリエッタならうっとりする様な英雄譚で終わっても、まぁ、トリエラなら絶対に怒りますよね……。十巻での「もともと器用に世の中を渡るようなタイプじゃなかった」という発言は、実は格好を付けたわけでもなく何かを暗喩しているわけでもなく、言葉の通りそういう意味でして、「政治は自分には向かない」ときっぱり断言しているわけです。国家公務員試験Ⅰ種に「合格して将来の内閣候補として嘱望され入庁した」と持って回った書き方をしたのは、実はこれも言葉の通りでして、まず「国家公務員試験Ⅰ種に合格する」というのが第一難関、本人の相当に高い能力が備わっているか試されるわけです。第二に「入庁した」時点で更なるふるいにかけられるわけですが、ハイ、「国家公務員試験Ⅰ種試験の合格率」とその後の彼らの公務員就職率は直結せず、国家公務員試験Ⅰ種試験に合格した上で更に「各省庁等就職対象公務員団体への就職試験に合格しなければならない」のです。キャリアなぞそんなに頭数は必要御座いません、というわけですね。彼らⅠ種試験合格者の公務員への就職内定率たるや、かなり凄惨たるものだそうですよ。でもってまだあるのかよと突っ込まれそうですが第三、「内閣候補として嘱望されて」就職を果たすには、100%の確率でコネが必要なのです。100%の完全自由競争原理は一粒の勝者と大多数の敗者しか生まないことが歴史の上で証明されていますが、逆にたった20数年で数%でも国の幹部を掴める位置に昇り詰めようと思うと、あらゆる幸運を味方にしなければならないわけで、つまりは「生まれもその運の一つ」に含まれるわけです。四巻のマリオ・ボッシの娘であるミミが登場する話にて、彼の出自の高さが窺えます。それがヒルシャーさんにとって良いか悪いかは別の問題としまして。が、ヒルシャーさん御自身にしても、実に良くも悪くも捜査官としての手腕は秀逸であったため、ジャンさんに脅迫される形でスカウトされた訳ですよ。たかだかユーロポールの一捜査官という身分でありながら、政府がバックにつくイリーガル組織である社会福祉公社と接触できたことが、ヒルシャーさんの優秀さを証明する証左な訳で、もう一つ加えるなら、トリエラがイタリア政府の暗殺者として記憶を消され人格も潰されて真っ白に「レストアされた上で再度、造り上げられた」事を、犯罪者に身分をやつしたあとでありながらも独自で調べ上げられたのも、彼の優秀さを証明しています。翻ってこれらの事象は、ジャンさんやジョゼさん、マルコーさん達のように軍隊出身の人間から比べれば捜査能力が群を抜いて優れていることを意味し、ヒルシャーさん自身が「裏切りのリスクが低く、五共和国派と関わりのない自分は都合が良かった」と述懐した点も事実ではあるでしょうが、それ以上にそういう方面で福祉公社のニーズにマッチしたわけです。優秀でなければオファーされるまでもなく問答無用で殺されていたでしょうからね。となると、トリエラからすると尚更「これではどちらが巻き込んだのか分からない」状況になるわけで、「殺人機械になることがですか?」と皮肉を洩らしたのもか細い最後の抵抗なのでしょうね、アレは。その事実をおくびにも出さず、三年以上も腹に溜めていたヒルシャーさんの頑固さにも脱帽しますが、ほんっとうに良いところも悪いところも似た二人なのですよ、この兄妹はマッタク。恐らくは誰も彼もから突っ込まれまくっているとおり、もうオマエラくっついちゃえよと、端から見ていると余りにも似たもの同士の、女性の趣味などこれっぽっちもよく分からないけれど、自分が出来る全力はこれだとブランドものの「ぬいぐるみat熊」を一途に送り続けたり、こんなもので懐柔されてたまるかと反発している癖に、三巻の冒頭でヒルシャーさんに送られる事になるぬいぐるみとドンピシャの雑誌を無意識で眺めていたり、「彼のシュタイフの凛々しい顔つきに酔いしれていた」と、さらりと爆弾発言をのたまってみたり、見事なまでの意思疎通ぶり。往々にして、無意識下で放たれた言葉は真実なのですよねー。相思相愛な癖に妙なところで一途、裏返して頑固、その似たり寄ったりなところですれ違ってすれ違ってと、余りにもまどろっこしく、どっこいどっこい過ぎて実にケシカランです。三巻のピノッキオ・シナリオ第二話の際、たむろっている無職の青少年達に「こんな所で油を売っていないで学校に行きなさい」と二人揃って説教したときは鼻血が出るかと思いましたよ……。あ、三巻にて実際にヒルシャーさんの洞察力と判断力は相当に優秀でしたし、フランカの背後をとったにも関わらず、銃を腹に抱え込まなかったせいで逆襲されたのは確かに大きな減点ですが、その後にフランコが投げ込んだ携帯電話型の爆弾に対する待避行動は、完全に反射の行動として身体に刷り込まれていなければ出来ないものです。公安警察や機動隊、特殊部隊に勤務したことがない捜査畑の警官出身なので、敵に自分の銃を触れられるという失態は仕方がないのかも知れません。優秀な特殊作戦員なら、単独行動下では決して制圧対象に自分から近寄ることはなく、対象の手でゆっくりと反撃に移られる隙を与えないよう、よく見える形で地面に銃を置かせ、再び直立させたあと、背面を向かせたままこちらに蹴って寄越させます。勿論、自身が手にする銃口は常に制圧対象に向けたまま、トリガーにも指をかけた状態を保持です。逆に普通の歩兵出身なら、声をかけるなどというその様なまどろっこしいことはせず、問答無用で死なない程度に鉛玉を数発ぶち込んで無力化します。要点から申しますと、捜査員は荒事専門の訓練を受けていないため、あの場に於いては結果的に人材としてはミスマッチであった可能性もありますが、「普通に優秀」程度の捜査畑警官なら、投げ込まれた携帯電話に対してグレネードと同じ待避行動を取れるわけがないのですから、フラテッロが二人とも大過なく生存して、少なくともある程度の情報を手中に収めた時点で、そこまで咎められはしないでしょう。それよりも、爆発物にベアリングが仕込まれていなくて本当に良かったです……。……えー、こういった無駄な知識ばかり溢れていると、第56話の主題「鳥籠に還る」が遥かに深く重い意味を帯びる気がしてならず、一期生の各主役級フラテッロ4名、ビアーチェを含めると5名となる面々は各自、それぞれが重いテーマを担っていますが、兎角、私に対してメッセージ性が高かったのが、クラエスとはまた真逆の方向から理解していたトリエラの「死の許容」が「生への希求」へと昇華したあの瞬間なのです。本当に落涙しました……。や、アンジェリカも落涙ものでしたが、彼女は「許されざる生者の贖罪」と「生きとし生けるもの全てへの祝福」というまた別のテーマが見いだせたため、まさしく「アンジェロ」だなーと。つまりは感動のベクトルがまったく違ったわけです。ってこの括弧書き長い! 終われ! ハイ終わります!)。
     とまぁ、横道に逸れたりして一日で記すことが出来ませんでした……。ひとまず、現時点までで作製完了している本書文を提出いたします。推敲も録にしない状態で上梓するものですから、文章の拙い部分も御座いますでしょうが、どうかお許しください。
     いやぁ、自分でもこれだけの文量を記しながら、「ヴェネチア、サン・マリノ寺院鐘楼占拠事件」に一切、触れることが出来ていない点に呆れんばかりです……。
     それでは、後半にて(記述する気力が残っていれば……)!

     余談ですが、HINAKA様のブログを閲覧した感想も、軽くエントリーのコメントとして残す程度の文章を記しておくだけのもりだったのですが、いつの間にやら対物ライフルの歴史問題や戦争犯罪者を裁く国際法などのお話、これからの戦争ビジネスのお話に発展して手が付けられない状態に発展しております。
     本文章も未だ、問題としている「ヴェネチア、サン・マルコ寺院鐘楼占拠事件」の装備面に対する進言や、原作を読み返した上で、改めて判明した社会福祉公社という組織の有り様に全く言及しておりません。もはや「どうしよー」という感じです。ひとまずは書き進めますが、このままお蔵入りでしょうかね……。

     あ、HOT様、「GUNSLINGER GIRL」に関する貴重な情報の方、有り難うございました。文章は上記の通り未だ半ばですが、まずは御礼だけでも。シルヴィアは担当官とも実に理想的な良い仲を築けていたようで、彼女が殉職したことは誠に惜しまれますね……。私はきりっとしたキアーラの方が好きなのですがw、彼女に対する描写は少なかったですからね。人格と担当官との親密度が分からない代わりに、死亡フラグを立てずに済んだのかなという一面も……。この漫画に限っては喜ぶに喜べないですねぇ……。
     それでは、書き殴りのまま推敲を経ずに拙い文章を残しましたが、根性が残っていたら更に「ヴェネチア、サン・マリノ寺院鐘楼占拠事件」のレポートを再三、纏めて記したいと思います。
     あ、フランさん、本当に長文を延ばしてしまって申し訳ないです。ご迷惑がかかるようでしたら、即座に取りやめますので、遠慮なく仰ってください。
     それでは!

    Comment by Mya — 2009/8/7 金曜日 @ 3:12:51

  7. 武器を新型に変えようとして 思い入れがあるから 的な発言がありましたよね・・・
    武器にも条件付けがあるって設定は・・・ないですよね さすがに

    Comment by rubezahl — 2011/2/2 水曜日 @ 8:28:37

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